―百合色―
翌日、俺は学校に行く気がしなかった。


百合を昨日フってしまったという現実を、あまり見たくない。


百合が泣いてそうで怖い。

全て自分が悪いんだ。


今更になって、

《百合が好きだよ》


なんて言えやしない。


言いたいのだが、
勇気がまだ出なかった。

しかも、マナとちゃんと別れていない。


自分から、連絡を取れないから。

マナの連絡が来るまで、
この気持ちは封印したままだろう。



『光輝!あんたいつまで寝てんの!』


今日もヒステリックな声を張り上げで、俺を起こしにきた、母親。


『うっせぇなぁ』


俺は低血圧なんだよ。



『うっせぇなぁじゃないでしょ!早く起きて学校に行きなさい!』



『はいはい』


俺には、父親がいない。
兄弟もいない。

父親は俺が小さい時に離婚したらしい。


父親の顔なんて知らない。

見たいなんて思わない。


母親だけで十分だ。



俺は低血圧な体を引きずり、学校の支度をし始めた。
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