―百合色―
『もうちょっと早く起きなさいよ!』



『うん』


母さんは、今からパート。
毎日のように俺より早く家を出る。


でも家事を放棄したりした事はなかった。


毎日、バランスの取れた朝食や夕食を作ってくれる。


俺、こんなんだけどさ?
一応感謝してるんだ。


将来、母さんを楽にさせてあげたい。


それが唯一、決まっている夢かな。



『もうこんな時間!光輝、食べたら流しに置いておいて!お母さん行ってくるから!』



『うん。行ってらっしゃい』


元気に出て行った母さん。

部屋にポツンと残された俺。


やっぱり寂しい。


こんな広い家に聞こえる音は、朝食を食べる音と、蛇口から一滴ずつ出る水の音くらいだ。



俺はこの家にあまり一人ではいたくない。


だから急いで朝食を食べ、家を飛び出した。
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