―百合色―
百合が約束を破るはずがない。


でも…百合は来ない。


すると、どこからか、物音が聞こえた。


─ガサッ


俺は百合だと思い、
勢いよく振り返った。



『百合?』


『ニャー』


その音を出した犯人は、
百合ではなく、猫だった。

猫は、暗い夜道へと去って行った。


『ねぇ…どうして百合は来ないの?』


電話をしてみようと思い、発信ボタンを押したが、


『電波の届かない場所にいるか、電源が入っていないためかかりません』


となる。


百合と繋がっているのは、携帯しかないのに─…


百合…一体どこにいるの?


俺は、夜空を見つめ、一番綺麗な星に問いつめた。

その星は、ただ俺を見つめるだけで、何も言ってくれない。


そんな時、

手に持っていた携帯が突然鳴り出した。
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