―百合色―
『意識が…ない?』


『はい。外傷はあまりないのですが…意識が戻らないんです』



『…そう…ですか…
ありがとうございました…』


俺は看護師に意識が戻らない理由を聞けなかった。


あまりにもショックで…
言葉がつまってしまった。

俺は来た道を戻る。


病院にいても百合には会えないから…



行く時、道を教えてくれた大きな月は、雲に隠れていて、俺が進む道を教えてくれない…


自分に後悔が押し寄せる。

俺があの時…
俺が…俺が…


『百合…会いたい…』



お願い…お願い…

百合…戻ってきて…

百合に言いたい事が沢山あるんだ…


百合…帰ってきて…



──…次の日、俺は病院へと行った。


今日は百合に面会出来るだろうと思い、足を動かした。


『508…』


百合の病室を探し、
部屋をノックする。


─トントンッ



中から声が聞こえた。
男の人の声。


『どうぞ?』


『失礼します…』


俺はゆっくりドアを開ける。


病室にいたのは…


百合の──…


そして俺の─…


あの人だった。
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