―百合色―
『百合…百合…』


俺の呼ぶ声…聞こえる?


何回も呼んだよ。


そのうち、百合はどれだけ聞き取れたかな?


ゼロでもいい。

イチでもいい。


俺はちゃんと呼んでたよ。


俺は立ち上がり、
この小さな街に向かって、叫んだ。


もちろん決まっている。

叫んだ言葉は、


君の名前─…



『ゆ──り──!!!』



ねぇ…聞こえた…?



その瞬間、ベンチに置いてあった携帯が、大音量で鳴った。


『また…タクミかな…
あいつタイミングいいからな…』



タクミだと疑いながら、
携帯を取り、開く。


待受に写し出された文字が、俺は信じられなくて、

何回も瞬きをした。



《着信 百合》



百合…俺の声…聞こえたの?
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