―百合色―
ドクン…


あぁ…心臓が苦しい。

手が動かない。


俺は、やっとの思いで、
通話ボタンを押し、
携帯を耳に当てた。


『はい?』


おそるおそる聞く俺。


『ねぇ今から出れる?
あの約束…私守れなかったから…今から守れるかな?』


間違いなく百合の声。

久しぶりに聞く…百合の声。


その声を聞いた俺は、
少しだけ涙がでた。


『いいよ…百合…大丈夫?ケガ…』


『全然大丈夫!
じゃあ今から来て?
秘密の場所に──…』



もういるよ…百合。


ここは俺の大好きな場所であって、
百合の大好きな場所だもんな。


この場所は、優さんも好きな場所で、優さんの大事な人の場所でもある。


俺は幸せだよ?


言ってなかったね、


俺の幸せは、


俺の幸せはね?



《君の笑顔》なんだ─…
< 185 / 353 >

この作品をシェア

pagetop