―百合色―
俺は取り戻そうとする。


二人の間に入って、
二人を裂こうとする─…


『許さねぇからな!いくらタクミでも、これだけは許さねぇ!』



『やめろよ、光輝。
俺達愛し合ってんだ』



…愛し合ってる?


タクミ…冗談はキツイぞ?


『なっ何言ってんだよ…
待てよ…』


二人は俺を置いて、
先へと進んで行ってしまった。


一人、残された俺。


周りは景色もなにもなくて、ただ頭の中に残るのは…

タクミの隣にいた、
もう一人の人の名前。


その人の名前を、
俺はタクミ達に向かって叫んだ。


目には沢山の涙を溜めて。


気付いてよ…



『百合──!!!』



───………


携帯の目覚まし音の無駄に大きい音が、耳に入ってくる。

ゆっくり瞼を開けると、
そこには光が溢れていた。


『夢?…か』



この街に朝がやってきた。
< 195 / 353 >

この作品をシェア

pagetop