―百合色―
百合が俺の隣に躊躇いもなく座るから、
俺の心臓は急に速く鳴りだす。


そんな体の異変に、
焦りを隠しきれない。


『百合…』


とりあえず、百合の名を呼んでみた。


百合は怒っているだろうか?


『何?』


『…怒ってる?』


単刀直入に聞く俺。

まだ鳴り止まない心臓。

俺達を見守る大きな月。


下を向いて何も発しない百合。


でも百合は、ゆっくりと顔を上げ、俺に視線を向けた。


『光輝?』



…ドクンッ


リズム良く弾む心臓は、
さらに加速をする。


月に照らされた百合の顔を、見れなくなった。


『光輝?怒ってないよ?
私もあんな怒ってごめんね?』



百合が謝らなくていいのに…

俺のせいなのに…


《ごめんね》の一言が、
喉につまって言えない─…
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