―百合色―
急いで俺は階段を降りていき、下駄箱に向かって、
無我夢中に走る。


あの校門の前にいる─…


人間を目指して。



『はぁ…』


校門に着いた頃には、
もう息切れをしていた。


『マ…ナ…』


その人は、ゆっくり俺の方を見た。


そして驚く仕草も見せず、俺に微笑んで、こう言ったんだ。



『光輝…久しぶり』


そのマナの笑顔が、
不気味なくらい恐くて、
俺は暫く止まったままだった。


『何でいるんだよ…』


『やっぱ来てくれると思ってた。光輝は優しいね?』


『質問に答えろ』


俺に緊張感が漂う。


『言ったでしょう?
取り返しにくるって…
光輝を連れ戻しに来たの』


『は?まだそんな事言ってんの?いいかげんに─…』

俺は最後までマナに言えなかった。


俺達の後ろには、
眉間にしわを寄せ、
俺達を見つめて立ったままの──…


『どういう事?』



『ゆ…り…』




百合がいた──………
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