―百合色―
俺は百合を追う。


『百合!百合!』


何回も名前を呼んでも百合は振り向いてくれない。


俺は、百合まで走り、
手を握ったが、俺の手を振り払った。


『百合?話聞けよ』


『嫌だっ!』



『何で?』


百合は、俺を見てくれない。


百合の顔が見たいのに…見れない。

だから俺は、百合の顔を覗いた。



百合の目には涙が流れていた。



『百合?泣いてるの?』


あまり泣かない百合が、
俺の目の前で泣いている。

俺はどうしていいか分からず、ただ百合の頭を撫でる事しか出来なかった。


百合が安心するまで─…


百合が泣き止むまで─…


ただ撫で続けた。


すると突然、百合が俺に抱きついてきた。


強い力で俺を抱きよせた。


小さな体で、

この俺を──………
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