―百合色―
元カノが目の前にいて、
俺は動揺なんてしていなかった。


ただ真っ直ぐ、マナの目を見て、暫く黙ったままだった。


マナの瞳に吸い込まれていく事なく、ずっと真っ直ぐ、見つめた。


なぜだろうか?


それは、百合を愛しているからかな。

百合の存在が大きいからかな。



二人の沈黙は続く。


先に沈黙を裂いたのは、
俺の方だった。


『マナ?今から話がしたいんだけど無理?』



『うん…大丈夫』


朝の街には、人がたくさん溢れている。


通学の中高生や、
通勤のサラリーマン。


様々な人達が、俺達の横を通り過ぎていく。



俺とマナは、近くの公園まで歩いた。


歩幅を俺に合わせるマナ。

隣にマナがいるのは久しぶり。


でも、心や、心臓は、


一切動かない──………
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