―百合色―
俺は、空を見上げる。


青空に向かって、
《百合》と呟く。


会いたい。


会いたい。

百合に…


『会いたい』



『私も、会いたい』


突然聞こえた誰かの声。


俺は慌てて顔を下げる。


目の前には、百合─…


『百合…』


『心配だったの。光輝がね…』



『ははっ…あははっ』


俺はつい笑ってしまった。


『何で笑うの─??!』


だって…
百合に会えたから。


『俺が百合に会いたいと思うと必ず近くに百合はいるんだな!って思ってさ!』


『だって会いたかったもん…』


頬を軽く膨らませながら怒る百合に、俺は抱きついた。


『百合~…』


『光輝?ここ道だよ?』


『俺さ、もう言わねぇから…百合に好きだって…』


誓うよ…百合…

俺は君に好きだなんて言わない。


『これからは、愛していると言うよ─…』



《愛している》


この言葉は、好きより嬉しくて、


でも好きより、悲しくて切なくて重い言葉なんて、
俺はまだ知らなかった─…
< 229 / 353 >

この作品をシェア

pagetop