―百合色―
~最終章・百合色~
俺の時間は止まったまま、
一秒も動こうとしない。

でも世界は、こんな俺を置いて、勝手に針を進める。

百合と楽しく過ごすはずだったクリスマスも、
初詣も─…

勝手に過ぎていった。


気が付いた時には、
もう冬が去り、
春がやってきた。


あんなに積もっていた雪も、知らない間に全て溶け、暫く見なかった木や、花が色をつけ顔を出していた。

『…春か…』


俺は今日もここにいる。

桜の花びらがヒラヒラと舞う。

そんな景色を見上げて見ていた。


今年も、綺麗なピンク色の花びらが色をつけた。


そして今も──………


この桜の下で百合を想っている。


あれから忘れた事などない。


ずっとずっと…

俺の中に百合は存在していた。
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