―百合色―
写真の中の百合は無表情。
あの笑顔はなかった。


でも…綺麗だ。


久しぶりに見る百合の顔。

いつ撮影したのだろう?

百合は何も変わっていなかった。


栗色の長い髪が、風で少し揺らいでいた。


『何も変わってねぇじゃん…何も…何も…』


俺はそんな百合を見ながら、笑った。



変わっていない。

百合はあの頃と同じ。


俺も─…あの頃と同じ…。


俺はしばらくそのページを見つめていた。


この写真の中へと行きたい。

そしたら、百合はびっくりするかな…


もうすぐだよ、

寂しくないよ、


辛くないよ、


苦しくないよ、


こう俺は写真の中の百合に向かって呟いた。



百合──……


愛しているよ──……
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