―百合色―
『えっ…』


電話の奥のマナは確実に動揺していた。
俺は聞き逃さない。


『いいよ、無理して付き合ってくれなくて』



『なっ何言ってるの?
意味分かんない』



その言葉…マナにそのまま返すよ。


お前のが意味分からない。

さっきまで男と一緒だったんだろ?


さっきまで何やってたんだよ。


胸に秘めたこの思いは、
マナには言えなかった。



『マナはちゃんと俺を好き?』



『え…』




何ですぐ答えねぇんだよ。


『好きか聞いてんの。答えられねぇの?』



『何でそんな事聞くの?』


は?
答える気ゼロ?


俺ならこの質問されたら直ぐ答えるよ?


好きだって。


マナも同じ答えじゃないの?


『もういいわ。しばらく連絡しないで。考え事したいし』


『え…こう…』

─プツ


俺が一方的に切った電話。

なのに、後悔だけが残る。

もっと俺が優しかったら、こんな言葉言わなかったかもしれない──…
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