―百合色―
『光輝…私…』


次はマナの口を塞いだ。

公共の場所で、人がたくさんいる場所で、俺はマナの唇を奪った。


『光輝…恥ずかしいよ…』


見せつけてあげようぜ?


人なんか関係ない。
場所なんか関係ない。



『マナ、少し歩こっか』


俺はマナの手をしっかり繋ぎ、歩いていく。

当てもなくとにかく歩く。


『マナ、俺ずっとマナの傍にいるから!』


『マナも、ずっと光輝の傍にいるよ!』


俺とマナは笑顔になる。


笑顔って人を幸せにする、すごく簡単なプレゼントだ。


俺は反対側の道を見た。


そこには、俺の高校の制服を着た、女の子の後ろ姿。

あのスラッとしたスタイルに、長い髪の毛は──…


間違えるわけない。

俺は君を見つけるのが得意だから。


あれは─…


百合だ。



俺は百合を目で追った。
でもすぐに反らした。



隣にはマナがいるから。
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