ACID RAIN
 天気は晴れ。
晴れでもいつも婆さんは大きな傘を持っていた。しかし、その日は傘を忘れてしまっていた。
散歩の途中で気づいたのだが、晴れていたので特に気にしなかった。そんな日に限って、普段降らない天気雨が降る。

常識では考えられない出来事を奇跡というならこれは奇跡だ。
天気雨が降り出し、焦った俺は急いで近くの団地の中へ走った。
6才だった俺は後ろの婆さんにまで気がまわらなかった。いや、気がまわっていたとしても何もしてやれなかっただろう。

婆さんは俺の後ろで溶けていった。

溶けていく人間をそれも自分の祖母が溶けていくのを見るのは6才の俺にとってあまりに衝撃的だった。
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