王宮の果実
「クロエ」
近衛隊長のクロエを呼びつけるとそっと私の後ろに現れた。
「息抜きしたいから付いて来なさい」
「分かりました」
フェンレントが眉をしかめる。
「アリシア様。まだ宵も半ば。今、席を外されるのは感心しませんね」
「というか、いつまで続くのよ!この宴。
ずっと椅子に腰かけてさすがに限界よ」
私をダンスに誘う強者なんてそうそう現れない。
だってマガリなりにもダナマタ―ルの王の一人娘。
年の近い隣国の男性達は興味はあれども、萎縮(いしゅく)するか、牽制(けんせい)し合ってる。
「息抜きくらいさせてっ」
フェンレントはまだ何か言いたげだったけれど、私はクロエを引き連れさっさと後ろに引っ込んでしまった。