Kissシリーズ・「執事とのキス」
彼の手を取り、走り出す。

そして人気の少ない中庭に来ると、手を放した。

「ゼーハーゼーハー…」

「どうしました? お嬢様。いきなり走り出して」

しかし彼は息1つ乱さず、平然としている。

…そう。彼は運動神経が高いし、勉強もできる。

それどころか、顔はモデル以上。

母親は有名女優、父親は世界中にいくつも会社を持つ大企業の会長。

彼は三男で、女子生徒達が虎視眈々と花嫁の地位を狙っている。

そんな人がアタシに対して、まるで執事のように振る舞うのには理由があった。

だけど!

「その背筋が寒くなるようなマネはやめて! 朝から血の気が引くわ!」

「心外だなぁ。オレはオレなりに、アンタのモノとしてちゃんと尽くしているのに」
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