COLORS【藍】 藍暖簾 (with響紀様)
藍暖簾
【一】
「いらっしゃい」
今日も暖簾を潜って、次から次へと客足が運ばれてくる、小さなおでん屋。
出迎えてくれたのは、茄子紺色の浴衣に、白い割烹着を着た女将。
「藍子さん、熱燗ね」
迷わず空いているカウンター席に座り込んだ、一人の男。
「はいよ。テツさん、外は寒いかい?」
「寒いも何も雪だよ」
どうやら常連客の一人のようだ。
「どれ、アタイも見に行っちゃおうかしら」
「藍子さんがカウンターを1分でも離れたら、この店はパンクしちまうよ」
「まぁ、お上手だ事」
客と冗談を交わしながら手際よくお酒を温め、おでんの火加減を調節している。
「姉さん、お任せで適当におでん盛ってくれる?」
店の奥からほろ酔い加減なのか、顔を赤らめた客の一人。
「飲み物は足りているかい?」
「それじゃ、同じものをもう一つ」
全く商売上手な女将である。
「あー、この一杯が最高だね。そうそう、今日は藍子さんに土産話を持ってきたんだよ」
「まぁ、何かしら?」