社長のご指名
「じゃあ、近いうちに行くから。」

『待ってるわね。』


「うん。雪菜に今夜電話するって言ってて?」


『わかったわ。』


「うん、じゃあね。」


『はいはい。章菜、頑張りなさい。』


「……ありがとう。」





そう言って、電話を切った。





久しぶりに言われた、頑張りなさい。





やっぱりお母さんだからかな?





私の変化にすぐに気づいて、何も聞かず頑張りなさいって言ってくれる。





不安だった時期、壊れそうな日々、会話の最後にとびきりやさしい声でそう言ってくれた。





その声を聞いて、元気付けられた事もあった。





涙が止まらない事もあった。





自分が母親になってお母さんは偉大だと思った。





私の理想で尊敬するお母さん。





紗衣にもいつかはそう思ってもらえるかな――――?




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