社長のご指名
苦しいぐらいに爆発しそうなほどに胸が鼓動を打つ。





きっと間抜け面を晒してるかもしれないが今はどうにも出来ない。




「ほら、呼べよ。」





口元を妖しく歪め、真っ黒な瞳に私は射抜かれる。





「――――っ、卑怯じゃないですかっ。」





ここで、いつもと違う一面を見せるなんて卑怯だわ。





表情も口調も全然違うじゃない。




ほんの数分前はにこやかに微笑んでたのに、今は楽しそうに意地悪な笑みを浮かべ、微笑みなんかとは程遠い。





「なにが。」


「なんで今っ……いつもと違うじゃないですか。わけわかんないですよっ。」


「俺は俺だろ?」


「ほらまた!もっ…なんなの?」





口調なんて大したことないんだと思う。





でも、今日は些細な事が気になってしかたがない。





「………んだよ。」





片手で目元を覆い少し上を向いた海堂社長はボソリと呟いた。




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