社長のご指名
私の足の周りをぐるぐると回る紗衣。





「どうかしたんですか?」

「あー…孔雀が怖いみたいなんですよ。」


「……孔雀、ですか。」





ここの動物園では、たくさんの孔雀が自由に歩き回っていた。





「ままぁーこっこあいぃー。」





一羽の孔雀がゆっくりとこちらに向かってくるもんだから、紗衣のしがみ付く力が強まる。





「うぅっ……ひっく……ままっ……だっこぉー。」





見上げた紗衣の顔はツルツルの頬が涙で濡れている。




屈んで抱き上げようとしたが……。





「紗衣ちゃんおいで。」


「うっ…うえっ…さーくん!」





私より先に海堂社長が屈み、紗衣を呼び寄せ抱き上げてしまった。





「すいません、替わります。」


「いえ、僕に抱っこさせて下さい。」


「でも、洋服濡れちゃいますし、重いでしょ?」


「そんな事ないですよ。可愛いじゃないですか。」




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