僕等が保つべき体温の最大
確かに顔はいい。

菜緒が入学して間もなく、波多野の事は友人との話題にのぼった。

しかしそれとほぼ同時に悪い噂も、話題にのぼった。

泣かされた女の子が沢山いると…。

菜緒の性格からいって、こういうタイプはまず好きにはなれない。

だけども圭一には、それとは別の何かがあった。

強引に表すならば”さみしそう”とでもいうのか?

ただ、それよりももっと深い感情を秘めているように菜緒には感じられた。

「お前、いい加減にしろよ!」

ふざけあっているのか、甲高い笑い声にまじって圭一の声が響いた。

声の方を見ると、圭一が洋太の肩をこずいている。

菜緒は、その光景を見て目を伏せてしまった。

洋太を押す圭一の手…。

その右手は、手首までしかない。

どういう事情かは解らないが、圭一の右腕には、手首までしかなかった。

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