僕等が保つべき体温の最大
「すいません…俺、なんか勝手で…」

確かに結衣は圭一にとって掛け替えのない存在だったが、ここに来てそれは自分だけでない事を今更ながらに感じた。

「おばさんとかにも辛い思いをさせて…それなのに…」

しゃべるたび、言葉に詰まるのがじれったく、圭一は自分がどんどん沈んでいくのが辛かった。

それをみていたおばさんは、同じようにまどろっこしく感じていたが、しばらく頭の中で何かを整理するかのように考え事をしていたかと思うと、今度はやさしく諭すように話しだした。

「圭一君は、結衣のお葬式来れなかったから見てないけど、結衣の顔はとても安らかだったのよ」

そして、続ける。

「救助の人にも聞いたわ。圭一君がどれほど必死だったか、結衣をどれだけ助けようとしていたか」

悲しみに沈んでいたようにみてた、その表情は、実はその目の奥にやさしさを湛えていたことに気付く。

「それに、天野君からも聞いていた。ずっと結衣と一緒に居てくれてたんでしょ?」




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