僕等が保つべき体温の最大
「そんな風に、見えないものに固執している圭一を俺は見ていられなかった」

洋太の性格からしてみれば、違うものは違うよと簡単に言ってのけそうな気もするのだが、彼はそれをすることが出来なかった。

「最初は気付かなかったんだ。圭一があんまりにも自然に話すから。それがだんだんと”あれ?”って思うようになって・・・」

つまりは、タイミングを逃してしまったということらしい。

「気付いたときには、遅かった。当たり前のように結衣ちゃんのことを話す、圭一にホントのことを言うことができなくなった」

そんな、圭一を見ていて思ったのが、さっきの”マグデブルグの半球”だったらしい。
ようするに、空っぽの心を何かで埋めれば半球は自然に離れると洋太は考えていたのだ。

「そう思って、いろいろと遊んでみたりしたけど、圭一の心は結衣ちゃんから離れることはなかった」

それが洋太の優しさで、他から見たらわがままともとれるものだった。

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