僕等が保つべき体温の最大
”私は最低だ”

菜緒は、いつも自己嫌悪に陥る。

どんな事があろうと、それを見て同情したり可哀相と思うことは人間として最低な事だと、菜緒は考えるからだ。

たった今も、目を背けてしまった。

”こんな自分には…”

圭一の事を想う資格はない。そう考えて更にへこむ。

実際には、どうだろう?。

菜緒は圭一と話した事もない。ただ一方的に気になっているだけなのだ。

圭一の持つ深い感情に、勝手に惹かれているだけなのだ。

”だとしたら…”

勝手に悩むのもどうかしている。

菜緒はスッとその場を離れた。

大学生活も始まったばかりだ、自分にはもっとやりたい事があったはずだ。

そんな風に開き直って、菜緒は走り出した。

その姿を

ずっと後ろで洋太が眺めていた。

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