僕等が保つべき体温の最大
”あの日”に帰って考える。

結衣の絵を初めて見た日。

そこにいたのは自分に背を向けた自分で、そんな自分がなによりも、自分の心を映し出しているように見えた。

「後ろ姿もカッコよかったよ」

随分あとで結衣が圭一に言った言葉だ。

「でも、あの絵は怒ってなかった?」

「へへへへ」

圭一が聞くと結衣はそれに笑って答えた。

「怒ってた。むしろ泣いてた」

ニヤニヤしながら言う結衣に圭一はムッとした顔を向けたが、内心はドキッとしていた。

結衣はそうやって、いつでも圭一の心に触れてきた。その温かい手で。

そして今は、まずその温かい手に別れを告げなくてはいけない。

例え結衣の存在を感じられても、もう求める事は出来ないのだから。

その温もりは感じることは出来ないのだから。

ただ、きっと忘れない。

そう強く思うと、圭一はおばさんの方を向いた。

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