僕等が保つべき体温の最大
駅までの道は不確かな曲線の連続で、そうでなくても視界のはっきりしない圭一の足どりを更に悪くした。

たどたどしくも紡ぐその足跡は、きわめてただしい直線とは言い難たかったが、それでも真っ直ぐとすすんでいた。

そうやって意思を持って進める歩みは、時に悲しみに触れるとパタリと立ち止まってしまったりもした。

それは、圭一の胸の中にある確かな感情で、いままで正直に向き合えないでいたものだ。

今、圭一はその時その時の感情で揺れている。

そしてそんな風に揺れている自分を悪くないとも思っている。

自分の都合で結衣を抱え続けていたけれども、失ってしまった結衣を思って悲しんだり、立ち直ろうとしてみたり。

そんな風にフラフラと揺れている自分こそが、なんというか”ちゃんとしている”と思っている。

”誰かいたな。そんな人が”

圭一は思い出していた。

目の前で泣いたり悩んだり。正直すぎるくらい自分に正直な人の事を。

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