僕等が保つべき体温の最大
「何で俺なんかに会いに来たの?」

確かめると言うよりは、投げ捨てられたようなその言葉に、菜緒は少したじろいでしまった。

しかし、そんなの自分の勝手なんだから好きにさせてほしいとも思った。

「会いたいから会いに来た」

「それだけ?」

「うん。それだけ」

実際、今はそれだけだ。その先に何か期待していた訳でも、思惑があった訳でも無い。

だから…。

「会えて嬉しいよ」

菜緒は取り敢えず何の装飾もない、思ったままの言葉を投げかけた。

「ああ、そう。」

そっけなく圭一は答えて来たが、そんな返事でも菜緒は、また嬉しく感じた。

言葉はいつも重ねるだけで増幅する。

思いの分だけ言葉を重ねて、重ねた分だけ思いは膨らむ。

菜緒はそんな法則に無頓着だけど正直だ。

いつだって自分が言いたい言葉をしゃべって、その分ちゃんとみたされている。

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