僕等が保つべき体温の最大
「ご存知かもしれませんが…」

「ご存知?何が?」

「私は波多野君の事が好き」

心の底からスッと出たその言葉は、それを言えたこと自体が気持ちよくて何度でも口をついてでた。

「ずっと前から好き。初めて見た時からずっと」

圭一は困ったような顔をしていた。菜緒はそんな圭一の顔をスッキリした気持ちで見ていた。

「なんて言うか…」

圭一にしてみれば、結衣の事にやっと整理をつけ始めた矢先の事だ。ハッキリいってどうしたらいいのかわからない。

でも、圭一は大きく息を吸い込むとスラリと喋りだした。

「なんて言うか、どうしたらいいかわからないけど。でも嬉しいよ」

「へ?と言うと?」

「自分の気持ちをどうしたらいいかわからない。でも嬉しいと思った」

「はあ。それはどうも…」

釈然としないながらも菜緒は充分満足していた。

明日だって明後日だって。きっとこの先いっぱい話せる。だから今日はこれで満足だ。

「さて、帰ろうか?」

「うん。帰ろう」

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