僕等が保つべき体温の最大
圭一は、あの忌まわしい。雪山の事故を思い出していた。

吹雪の中、二人で身を寄せ合いながら助けを待ち続けたあの辛い体験を…。

互いの両親に内緒で出掛けた、スノボー旅行で二人は遭難してしまったのだ。

吹雪のため、コースから外れた二人は下山する事が出来ず、風をしのげる岩窪で助けをまった。

「圭一、あったかい。ありがとう…」

必死に彼女を守ろうとする圭一の腕の中で、結衣がつぶやく。

結局、圭一が結衣の口からでた声を聞いたのは、これが最後だった。

次の日の朝。奇跡的に助かったが、それから二人は会うことを許されなくなってしまった。

なんといっても周囲に咎められたし、圭一自信が自分を責めていたのもある。

あんなところに行かなければ。あんな事をしていなければ。自分がもっとしっかりしていれば。

後悔ばかりがとめどない。

圭一は自分の弱さから、結衣に会う事が出来ずにいたのだ。

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