僕等が保つべき体温の最大
「なんか飲む?」

結衣は、黙って首を横に振った。

そして、ペタリと圭一の横につく。

圭一は、優しく笑いかけた。

「絵、描けそう?」

結衣は、固く微笑みながら首を振った。

「ゆっくりやろうよ、そのうち描けるようになるよ」

圭一は、そう言うと結衣を抱き寄せた。

結衣はその腕の中で、眠るように目を閉じる。

ただこうしているだけで、本当は幸せなのだろう。。

会えなかった、あの日々に比べれば…。

結衣のそばにいられる事だけを素直に喜ぶべきなのだ。

それでも圭一は、事故の前に戻りたいと、もがいていた。

今ではない、過去にすがり続けている。

未完成なのは、絵ではなく自分だ。

今ある幸せだけに満足できない自分こそが未完成なのだ。

だからこそ完成してほしいと、圭一は願っているのかもしれない。

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