僕等が保つべき体温の最大
もう一度、さっきの前提に立ち返る。

”私は波多野圭一が好きだ”

その事をきちんと、認めて次に進もう。

圭一の彼女の事。

圭一の右手の事。

それらの事を踏まえて考える。

”やっぱり、私は波多野圭一が好きだ”

もう、揺るぎない。この感情は押さえ切れない。

例え最後に自分が傷つく事になっても、自分に嘘をついてまで自分を守る必要なんてどこにもない。

結局、菜緒は”好きだ”というひとつの結論に達して、すがすがしい気分でいた。

ろくに話した事もない相手を思い、こんな結論をだすのは、慎重さに欠ける気もしたが、そんな事はとても小さい事のように感じた。

そんな事よりも、菜緒は信じたかったのだ。

人を好きだと思う自分の気持ちを。

そんなの誰だってひとりよがりじゃないか?わがままに貫いたっていいんじゃないか?

上がり続ける自分の体温を、菜緒は心地よく感じていた。

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