僕等が保つべき体温の最大
朝のホームは、物凄く混んでいた。

数え切れない位人がいた。

菜緒は、そんな中でも直ぐに見つけてしまう。

圭一の姿を。

”得意だもんね”

自分の視線の中に圭一が入って来るのか、と思うくらい菜緒にしてみれば圭一探しは容易な事だった。

いつもの菜緒なら、そのまま視線で追ってため息のひとつもついていただろう。

しかし、今日の菜緒は違った。

”波多野君と、話しがしたい”

その思いで、菜緒は人混みを掻き分け、圭一の距離を縮めた。

圭一もスルスルと人混みを抜けていく。

それでも何とか追い付こうとした、その時。

ドンッ!

圭一が前から来た人とぶつかった。

トクダン何事もなく、圭一は行ってしまったが、菜緒はその場に立ち止まる事になった。

圭一のカバンから何か落ちたのだ。

”スケッチブック?”

それを拾い上げたとき、圭一の姿は人混みに消えていた。
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