僕等が保つべき体温の最大
飲み物の列は見事に直射日光の下に出来ていて、喉の渇きを極限まで絞り込む。

「アヂ〜」

犬みたいに舌を出して唸っていると、前の女の子が小さく笑いかけてきた。

「ホントに暑いですよね」

女の子は、口をすぼめて「ふう」と息を吐き出すと両手でパタパタと顔をあおいだ。

圭一は愛想笑いでそれに応えると、自分も手で顔をあおいだ。

それを見た女の子は微笑みながら、今度は圭一の顔をパタパタとあおいぎはじめる。

”あーあ”

圭一は彼女の好意をすぐに感じとったが、それに応える事も、また拒絶することもしないでいた。

「ハイ、どうぞー」

彼女がグラスを手に差し出してきた。

圭一はいつもそうだ。気がついたら、踏み込まれてしまう。

”まあいっか…。パーティーだし”

圭一は彼女からグラスを受け取ると、洋太が待っているのとは別の木陰に向かった。

”熱くならなければ”

圭一は自分に確認をするようにつぶやいた。

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