僕等が保つべき体温の最大
「あの事故は、お前からいろんなものを奪ったんだよ」

それは、圭一もよく解っている。だからこそ取り戻そうと必死にもがいているのだ。

「どんなに頑張っても過去にはもどれない」

そう話す洋太の顔は苦痛に歪んでいた。

「現在だったり、もう少し先を見たほうがいいんじゃないか?」

「俺は、そうしてないかな?」圭一は早口でそれに答える。

「少なくとも俺にはそう見えない」突き返すように洋太も返した。

洋太の口調は、責めるようでもあり、なだめてるようにも聞こえる。

「もっと、結衣以外の娘と遊べって?」

「あの事故は過ぎた事なんだよ」

だから…。

”だから、そこからはい上がろうとしてるんじゃないか?!”

「もう解ったよ…」圭一は立ち上がり歩きだした。

「待てって」洋太が呼び止めても、とまらない。

逃げ出すようにその場を離れる圭一の視界の端には、菜緒の姿があった。

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