僕等が保つべき体温の最大
「見るのはね。描くのはどうかな?」中、見てみな。と洋太は言ってきた。

菜緒は悪いような気もしたが、促されるままにスケッチブックをパラパラとめくった。

確かに、あまり上手ではない。線はバラバラで、構図も何だかよくわからない。

「利き腕じゃないにしても、あんまりでしょ?」

洋太の言葉を聞いて、菜緒の胸は少し傷んだ。

「見るのは、好きなの?」

洋太は、返事をしないで黙っている。

ほんの少しの間だが、沈黙の時間が流れた。菜緒は、少し卑怯な気がしたが、オモイキッて切り出す事にした。

「天野君。私は波多野君の事が好き」

洋太は、少しビックリしたような顔で菜緒を見た。それを見て菜緒も少し沈んでしまった。

「いけない事かな?やっぱり…」

圭一には彼女がいる。それを承知で彼の友人にこんな事を言ってしまった事を、菜緒は後悔し始めている。

「いい事だと思うよ」

洋太の返事に、今度は菜緒がビックリした。

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