僕等が保つべき体温の最大
「矢野紗梨奈です」

「波多野圭一です」

互いに挨拶を済ませた後は紗梨奈がひたすらしゃべり続けた。

新婦とはいとこ同士だということ。歳が近いのに結婚をすることが不思議だということ。そして…。

いま自分には彼氏がいないということ。

「誰かいい人いないかなあ…」

あからさまに自分へ向けられたセリフに、圭一はどう応えるか考えていた。

”俺には…”

彼女がいる。そう言ってしまえばこの場はすぐに解散になるだろう。

しかしそうすることで、場が冷めてしまう事が圭一には辛く感じた。

「この後…どっか行く?」

紗梨奈は、キタ!とばかりに満面の笑みをうかべる。

「行きたいけどなあ…」

上目づかいで見ながら言うと、親と来ているから難しいと言った。

圭一は、ホッとする。そして急激に自己嫌悪に陥った。

「じゃあ」

そそくさとその場を離れようとしたとき

「待って!」

と呼び止められ、渡されたのは携帯の番号だった。

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