僕等が保つべき体温の最大
「行きましょうか?」

言いながら紗梨奈は、圭一の手に触れた。

クーラーのせいか、紗梨奈の指先は氷のように冷たい。

圭一が手を引っ込めると、今度は足の爪先でスネを軽く蹴ってきた。

「出ましょうよ?」

あごを引き、上目使いで言ってくる。

圭一は目をそらし、黙って席を立つと。紗梨奈も慌てて続いた。二人は結局店を出た。

外に出ると、生暖かい空気が二人を包む。

街の明かりが、気持ち悪い位にチカチカと光っていた。

紗梨奈の仕掛けてくるゲームのようなやり取りは、圭一の気持ちのどこにも触れない。

嫌だとも思わないが楽しいとも思わない。

しかも不思議なことに、こんなやり取りの中では、罪悪感のようなものも抜け落ちていた。

「波多野さん」

紗梨奈に呼ばれて、圭一が振り返った。

その瞬間。紗梨奈はスッと近づき圭一にキスをした。

何も考えず圭一はそれに応じた。

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