僕等が保つべき体温の最大
「そういうのって、フツー男の人が…」

うつろとも言えるその視線は、右へ左へゆらゆらと動く。

「”どうしたい？”なんてフツー聞く？」

何を言われても圭一は答えない。返す言葉なんて始めから持っていない。

そんな表情を見てとったのか、紗梨奈は大きくため息をついた。

「帰ります。なんかヤダ…」

「そうか。だったらそれで」

紗梨奈から導き出した答えを受け取ると、圭一は素直にそれに従った。

「ちょっと！本気？！」

紗梨奈はもう怒りを隠さない。彼女にしてみれば散々誘った揚句のこの扱いは、馬鹿にされているのも同然なのだ。

「ちがうのか？どうすればいい？」

圭一もどうしたらいいのか分からないのでまた尋ねる。

「サイテー……」

さすがの紗梨奈ももう返す言葉も無いようで、そう言い返すと踵を返し行ってしまった。

残された圭一は紗梨奈が消えた風景をただ眺めていた。

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