僕等が保つべき体温の最大
「からっぽだな…」

圭一は呟いた。

何かを期待していた訳でもないが、何もなくなるとその虚無感だけが身体をみたした。

「からっぽだ…どうすればいい…」

投げかけた質問はどこに向かう訳でもないが、圭一は何かを捜しているかのように視線を忙しく動かしている。

その目に映し出されるのは、軟らかく滲む街灯でしかないが、その残光はゆっくりと線を結び一つの像を映し出した。

「結衣…」

暗がりに浮かんだその姿は、こっちを見ながら微笑んでいる。

「結衣!」

圭一は駆け寄る。

「出られたのか?!部屋を?」

結衣は黙ってうなずいた。そして何かをしゃべろうと、くちびるを動かした。

”だいじょうぶ”

残念ながら声にはならなかったが、圭一にはしっかりと聞こえたように思えた。

”だいじょうぶ”

微笑みながら、そう伝えてくる結衣を見て、圭一は何か吹っ切れたような気分になった。

そう思うと自然に涙が溢れて来て、圭一は力いっぱい結衣を抱きしめた。

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