僕等が保つべき体温の最大
「あれ?もう帰ってきたの?」

洋太は好奇心いっぱいの目で圭一を見てきた。

「だれ?」

「先輩の彼女のいとこだって」

「ハハッ難しいとこ行くね?」

「別に…!」

口説いた訳じゃない。と突き放すと「で、どうした?」と聞き返してきた。

「どうもこうも…」

圭一は、言いながら手にあるメモを持て余していた。

「誘うの?」

洋太の目は期待で満ちている。

「そんなこと…」

「結衣ちゃんか?」

圭一が黙ってそれに応えるのを、洋太は不機嫌そうに見ていた。

結衣の事は裏切れない。圭一の答えはいつもそれだ。

だったら、あんな態度とらなければいいのだが。

やがて、式が終わろうとしていた。

圭一は番号が書かれたメモを、まるめてくずかごに放り込んだ。
< 6 / 128 >

この作品をシェア

pagetop