僕等が保つべき体温の最大
洋太は図書館の中だと言うのに大きな声で菜緒を呼んだ。

「神木さん!」

「天野くん。声が!」

人差し指を口にあて、静かにしろと訴えたが洋太は聞く耳を持たなかった。

「神木さん。来てほしいんだ。圭一がまたおかしな事を言い出したんだ」

「落ち着いてよ。静かに話してよ」

それでも洋太はやめない。回りの冷たい視線が全部自分に刺さっているように菜緒は感じた。

「一緒に来て欲しいんだ。圭一のところに」

菜緒は心臓がドカンと鳴ったのを感じたが、冷静を装いながら洋太の背中を押して外に出た。

やっと人目を気にせずに話せるところへ来ると、更に洋太は話し続けた。

「圭一が結衣ちゃんと結婚するなんて言い出したんだ。あいつは何にもわかってないんだ」

今度は心臓がドカンドカンと2回鳴った。本気でめまいがして倒れそうになった。

「とにかく来てくれ!」

破裂しそうな気持ちをどうにも出来ないまま、菜緒は持って出て来てしまった「キノコ大図鑑」を持て余していた。

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