僕等が保つべき体温の最大
呆れるくらい前向きだったら救いようがない。

その場の感情に流されたっていいことなんてあるはずない。

だけど菜緒は、どうしようもないくらい無茶な選択をした。

それは、菜緒の気持ちの中のバランスみたいなものだった。

どうにもならない恋をして、わがままなくらいにそんな気持ちをばらまいた。

抗いようのないくらいの悲しみに対して目を反らしたり、受け入れられない優しさに口をつぐんだり。

何かに向き合ったって結局遠巻きだ。何も起きない場所で見てるだけだ。

そんなふうに偏った気持ちを平衡に保つために菜緒は思った。

”もっと傷つくべきなんじゃないか?傷くことが必要なんじゃないか?”

それは、結局のところワガママなのかも知れない。

ただ、そんなワガママを抱えた心はそのまま走り出した。

さっきまで雨雲を抱え続けた空は、その糸を切り大きな雨粒を落とし始めた。

ドシャ降りの雨の中、菜緒と洋太は、圭一の部屋に向かった。

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