裏切り恋愛
キーンコーン……

三時間目。

「次移動?」

二時間目が終わり、慎吾が伸びをしながら実由に問う。

「あ、だね。理科室だよー」
「理科室って分かんないや」
「あ、じゃああたしが―……」
『慎吾くんッッ!!』

実由の言葉を遮る、黄色い声。
実由が声のした方を振り返ると、そこにはニコニコと大笑顔の女子達がいた。
見ると、クラスの違う子までいる。
転入して二日しか経っていないというのに、一気に噂が広まったらしい。

「二組に超カッコイイ子が来た」とでも流れているんだろう。
実由はそのあまりにも多い数の女子達に圧倒された。

「ねぇ、理科室まで一緒に行かない?」
「あ、ずるい!私も、小高くん!!」
「私が先よ!慎吾くん、案内しますわっ!!」

女子が口々にそう言い張る。
実由と慎吾は、少し引いている。

慎吾がゆっくり口を開いた。

「悪ぃね。俺、実由チャンに案内してもらうつもりだから、帰ってくれる?」

慎吾はニッコリと優しく断った。
実由はたくさんの女子に囲まれても我を忘れない慎吾の態度にほうっとなった。
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