ロンド


『……』


白百合さんは、何も言わない。


『白百合さん、ですよね?』


あなたはさっき、その名前を呼んだ。


『深宵』、と。

その悲しげな声で、悲しげな顔で。

自分の罪を懺悔するかのように。


もしかしたら、あなたはずっとこうしていたのかもしれない。

ここでずっと、片割れの彼を想って、泣いていたのかもしれない。

悔んでいたのかもしれない。


『……どなた、ですか?私を……』

『知ってるのは、"今"の現状のあなただけ』

『"今"、とは……?』


白百合さんは、あまりにも時をまたぎすぎた。

知らず知らずのうちに、何年も、何十年、何百年と……その時を過ごしてきてしまった。
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