ロンド
『"今"は、あなたが亡くなってからもう300年を超している』
その言葉を聞いて、白百合さんは目を見開いた。
『……嘘よ、そんな……三百だなんて……』
『あなたは、そうやって……泣いて五千年を過ごしてきたんです。弟を殺し、悔み、悲しみ、自らをも殺し、今までずっと……』
ずっとずっと、苦しんで、苦しめて来た。
『あなたは、さっきみたいにずっと、誰の言葉も聞き入れずに泣いていたんでしょう?』
あたしがその名前を呼ぶまで、その顔を上げなかった。
聞き入れようともしなかった。
聞こえているかも、分からなかった。
『もう、いいじゃないですか』
『……なに……』
『あなたは十分泣きました。十分すぎるくらい、泣きつくしました。もう許してあげましょうよ、自分の犯した罪を。もう過去にとらわれないで、進みましょうよ、深宵と』