セレネ
「宮川が犯人とでも言いたいの?情報が足りないわね。」

幸太郎の閉じた手帳を指差し、そして付け加えた。

「犯行現場からは室井と違うB型の血液が発見されている。それも大量にね。

宮川の血液型はB型。失踪している宮川の血液型と見るのが妥当ね。」

「宮川が室井と争って出来た傷による出血じゃないですか?」

幸太郎のその言葉に恵理が呆れ顔で

「背後から五ヶ所も刺されている人物が、相手にそんな出血させる傷を負わせることが出来て?
逆も同じ、そんな出血している人物が五ヶ所も相手を刺して、逃げる事出来るかしら?」

その言葉に幸太郎は、尊敬の眼差しで恵理を見つめた。

そんな幸太郎に対して恵理が怒った声で言った。

「で、なんで私が運転しているの?」

「あっ気づきました?運転苦手なんです。」

幸太郎は手帳を上着のポケットに入れながら、首を窄めた。

「よっヒーローの御到着だね。」

秋月が幸太郎の肩を叩いた。

「あっ秋月先輩。お久しぶりです。」

幸太郎は敬礼しながら言った。

秋月は幸太郎の世田谷署時代の先輩であった。

「こちらは本庁の広瀬警部です。」

幸太郎が恵理を紹介した。それを聞いて秋月も敬礼しながら、

「東新宿署捜査一課の秋月浩二です。宜しく御願い致します。」

恵理は温かな笑顔で敬礼を返すと

「警視庁捜査一課の広瀬恵理です。こちらこそ宜しく御願い致します。」

そう言って捜査本部のある室内に入っていった。

「えらい美人だな。あれが有名なプロファイラーか?」

秋月は敬礼したまま、恵理の後姿を見ていた。

「そうなんですよ。天は二物を与えるんですね。」

「でも、アメリカ帰りって高飛車な女なんじゃないの?」

と幸太郎のほうに向きかえり秋月は言った。

「それが案外可愛らしい感じですよ。特にあの笑顔が堪らない。」

そのにやけた幸太郎の頭を叩いて

「そんな顔していると見透かされるぞ。」と秋月は言って室内に入った。

幸太郎も顔を擦り、にやけをとってから後に続いた。

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