加納欄の誘拐 シリーズ21
「さぁてと、帰ってゆっくり寝るかぁ」

苫利先輩が、宿直→非番というシフトのため、事務仕事を、ようやく仕上げて帰ろうとした時だった。

トゥルルル。

トゥルルル。

と、電話が鳴った。

「なんだよ。女と待ち合わせかよ」

高遠先輩の言葉に、苫利先輩は、あたふたしていた。

「な、なにを、言ってるんですか。そ、そんなわけ」


当たりじゃないですか(-.-)


非番なんだから、デートならデートって、素直に言えば言いのに。


あたしは、苫利先輩を見ながら、思った。

「はい、こちら南署です」

苫利先輩は、わざとらしく丁寧に、電話に出た。

「もしもし、どちら様?え?松田?どちらの松田さん?え?課長?」

そう言って、苫利先輩は、課長のデスクに目を向けた。

「課長は、まだ来てないみたいですけど…………え〜〜っっっ??!!!」

その声に、皆が一斉に、苫利先輩を見た。

苫利先輩は、電話を慌てて、スピーカーにし、あたし達にも聞こえるようにしてくれた。

「ダカラァ、オタクノ課長サン、預カッテルンダッテバァ。簡単ニ言ッチャエバ、誘拐?キャハハハハ」

馬鹿笑いが、聞こえた。

吉井さんは、後ろにふりむき、ガラス張りのブースにいるオペレーターの刑事に、逆探知の指示をしていた。

高遠先輩は、苫利先輩から受話器をもぎ取ると、犯人と話しはじめた。

「おい。課長は、無事なんだろうな、声を聞かせろ!」

「アレェ?サッキノ声ト違ウネェ。ワザト話シ長引カセテ、居場所知ロウトシテンノォ?ムリムリ、ソンナコトシテル間ハ、コノオジサン戻ラナイヨ、ジャ、切ルネェ〜」

一方的に、電話は、切られた。

吉井さんは、オペレーターを見たが、オペレーターは、首を左右に振った。

逆探知は、できなかった。

「ホントに出社してないのかよ」

いつの間に起きたのか、大山先輩が、来ていた。

「私、会議室見てくる!」

祥子さんは、言うなり、部屋を出ていった。

そして、また、電話が鳴った。

取ったのは、高遠先輩だった。

「もしもし」

「ア、サッキノ刑事サン?逆探知トカシナケレバ、モゥ少シ、話シガデキルンダケドナァ」


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